LinkフリュトキSSまとめ



「君とむかえたい」

「ウチくる?」
曽我部が、あまりにも軽々しく誘ってくるものだから。
誘われた九竜のほうも、つられるように「ああ」とあっさり返した。
よくみれば、曽我部の細い手は情けなく震えており。
それをみた九竜は、またつられるように小さな耳を真っ赤に染めた。



「続きは現実で」

「よお、少年。ちょっといいか?」
「なんだよ、フリュー」ゲルと言い終わる前に、九竜は曽我部に口を塞がれた。
お互いの唇が多少かさついていようと、萎えることはなかった。
慣れない行為に、九竜は鼻で呼吸することさえ忘れてしまう。
少年が窒息してしまう寸前。曽我部は名残惜しそうに、その下唇を甘噛みして舌でなぞってから唇を解放した。
はっ、と苦しげな声を漏らす少年の無防備な尻を撫で回し。
彼の瞳に嫌悪の色が無いことを確かめてから。続きは現実で、と九竜の耳元で囁いた。



「春がきた」

「この頃の団長は、やけに機嫌がいいですね」
鼻歌交じりにコーヒーをすする団長。
シックザールは現在解散に向けた後処理に追われ、メンバー全員で作業中だ。
普段なら真っ先にだるがるであろう団長がまともに作業しているのは有難い。
だがいい歳をしたおっさんが鼻歌まじりとは、流石に憧れた人間とはいえ顔をしかめたくもなる。
人の感情の動きには敏感なはずの団長は、メトロノームの呆れ混じりの視線に気付く様子もない。
「春だからね〜」
「春だって? 今は……」
チェロの返答に、怪訝そうな表情をみせるメトロノーム。
「ノム君には、まだ早い話だったかな」
チェロは微笑みながら、幸せそうな団長をみつめた。
もうすぐ団長の元へやってくるであろう少年のことを考える。
無邪気な顔は団長にイジワルをされた途端。色を変え、少年を大人へと変えていく。
そんな少年を、だらしない笑みで見つめ幸せそうに笑う団長の姿。
こんな光景が春といわずに、なんであるというのだろうか。



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あとがき
今更ですが2010年に書いたフリュトキSSです。
時間軸は「ウチ〜」が本編クリア後のリアル。「続きは〜」は決戦前のThe World。
「春が〜」は本編後の元アジトで、部下たちから見たフリュトキの様子。
テイルズの新作にも杉田ボイスの裏切りそうなオッサンが出ると聞いて今から楽しみだったり。
11/04/29 UP





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